2015年2月27日金曜日

2月の詩誌紹介

2月の詩誌
 
 紹介する詩誌・通信等11冊の画像です。




1.『花』62号

 発行人は菊田守さん。編集委員長、編集委員には存じ上げている方々が多数いて、この雑誌の重厚な趣が、ここにあったかと改めて思う。東京で発行されているが、長野県から参加している同人も4名いるということで、親しみがある。内容は、詩作品を中心として、エッセイ、海外の詩、書評が4本、セミナーの報告。

 詩は、平野光子さんの「ふるさと」が心に沁みた。手術後の夫を長く介護していたが、昨年失った。「かれ の ひかり」で始る作品は故郷の「枯野」でもあり、「彼の光」でもあると思う。
 エッセイの中谷順子氏「高見順と千葉県」に注目した。日本未来派の詩人・高見順の詩集『死の淵より』は、十九歳のときに読んだ。大腸がんで死んだ父親の不在は、私にとって死を知った最初でなかなか立ち上がることができなかった。そのときに読んだ『死の淵より』は、詩の言葉の峻烈な力によって、肉親を失った苦悩の淵より跳躍して、二十一歳の夏に、私は始めての詩集『風』を100部限定で発行した。ペーパーバックスの私家版で表紙画も挿絵も自分で描き、編集して、町の印刷所で「本」にしてもらった。詩の言葉に力があるとすれば、自身の存在というものと、どのように言葉で取組んだかを「表現すること」によって、読者に「コンパッション」を与えることだと思う。詩を読むことは、「受苦」であるし、言葉の変容により「共苦へ誘う」ことだと思う。共感共苦によって、言葉は人を死の淵から脱出させることができると思う。詩の言葉に私は絶望していないからだ。







2.『独合点』第121号

 金井雄二さんの個人誌。ゲストは大橋政人さん。表紙画はケシゴム版画で犬の散歩の男性。開けると、大橋政人さんの「空の人」の1行目が「今年最後の犬の散歩で」で、始る。大晦日のでしょうか。最終行は、「家に帰って/今年最後の風呂につかりながら/空高く行く人の/足の下のムズムズについて/考えた」金井雄二さんのエッセイは「一家団欒」。他界されたお父さんのことを書き出しに使いながら、小説家・藤枝静男の「一家団欒」に話をすすめていく。後半は詩のことで、菅原克己という詩人の「ブラザー軒」という作品のこと。話のひきつけかたが上手い。金井さんと会って話しているような気持ちになる。


3.『叢生』第196号

 編集は江口節さんほか。関西に在住する13人の同人誌。江口さんは神戸市の方ですが、合評会は大阪市のようです。高知・和歌山・奈良と広範囲の同人たちの御住まい。江口さんの作品は14P.に「時計の冬」がある。3連の1行目に「ある日 ふいにさむい法律ができて/驚いて声を上げたが/さむいまま 回り始めたら止まらない/世はまだ壊れぬふりをあして時を刻み/錦秋にめくるめく日々を拡げよと人のまつりごと/ひた走るひそかな空と海のまつりご//」


4.『ロッジア』14

 時里二郎さんの個人誌。扉に目次のように《名井島》field notes vol.1とあり、鳥のかたこと 島のかたこと 名井島 伯母 *名井島のためのエスキス*とある。後書きを見ると、「14号からは、《名井島》という瀬戸内海にある(はずの)トポスのもとに、これまでの《半島詩論》と《島嶼論》をひとつの詩の空間として構想したい」ということです。山国の私には見たことのない「島嶼」とは、(とうしょ)とは大小さまざまな島のこと。 中国語では「島」とは別に小島を意味する「嶼」という言葉があり、これらをつなげて様々な大きさの島を意味する言葉ができた。 常用外であることもあり、しばしば「島しょ」と表記される。(wiki)/ 「島嶼とは、人が行きかう海の道であり、人ともにことばが往き来した。ことばはそこで停滞し、混じりあい、また次の島へ出て行く。そのような言葉の交通が、虚空の大洋に点々と、環礁や干瀬や岩礁のごときことばの造形をもたらした」(後書き)
鳥のかたこと 島のことかた の1の最初の部分。「小路の暗部をぬけて/せんぶり みつむり げんのしょうこ/そわかるこえの ほとほと /い行き そむほぎ はやぐひて/けにけに ひそひそ そひ ぬぐふ」field notesとあるように、島を探索して行くとせんぶり、みつむり、げんのしょうこなどが生えていて、けにけにひそひそと非常に小さな繊細な声が聴こえてくるのは、あれは鳥の声?いや、これは島自体の声ではないでしょうか。時里さんと、呼吸を合わせて島を歩いていく。ささ ここ きき しし け そんな見えない島の鳴かないとりの 「人の声の始め」が聴こえてきます。どうですか?聴こえましたか?


5.『黄薔薇』203号

 井久保勤 追悼号とあります。無駄なの無い紙面づくりの雑誌ですから、表表紙の裏面から、井久保勤さんの妻・井久保伊登子さんの連れ合いへの喪が始ります。病院での看病、対話の時間、亡くなって、不在となった家での空虚な時間。「夜ごと抱かれて」は、長い間連れ添った人への限りない愛と悲しみと、感謝と、永遠の悲しみが書かれている。書く、そのことで立ち上がっていく。涙をこぼしながら。ご自愛ください。そして、亡くなった井久保勤さんの年表が掲載されていて、主宰者の同人への敬意というものを感じた。それによると医師であったということがわかったのですが、お二人が夫婦で「黄薔薇」の同人であったことや、妻の伊登子さんが、子どもを三人出産したのち、岡山大学医学部に入学したということは、並みの努力ではない。お二人の詩は、深い人間愛に充ちて静かだ。
「わたしの青空」から「夕ぐれ/草いきれの丘に立つ/日向灘の海鳴りがきこえた/―ひと月前/この沖合いには/アメリカ軍の上陸用舟艇が/蝗のように群がる筈であった/(本土決戦/死を賭して 祖国を守らん)/生き死にはもうどうでもよかった/だが オレは/陸軍の学校から無傷で戻ってきた/占領されてしまった国の故郷は/ひっそりとして/たけだけしいものの姿はない/夕焼けはもう誰のものでもない」









6.『しある』54
 長野県大町市で発行されている詩誌。長野県内の先輩詩人の方々の雑誌で、10人の同人による。詩篇と短い散文が半分ずつの文量かと思う。短い小説も掲載されている。奥付をみると「後援 大町市芸術文化協会」とある。町の財政から芸術団体と認められて、活動費への援助があるということだと思う。同人の入替えがあり、雑誌の内容に変化がでてきたようだ。手堅いと内容の作品作りだと思う。





7.『ネビューラ』第41号

 巻頭の「水仙」という田尻文子さんの作品を好ましく読んだ。水仙とは、、、と思いながら読んでいくと「五年前まで/この家には老婆が一人で住んでいた/九十歳は越えていただろうか/何日も見かけない日が続いた ある日/声をかけると/腹が痛うて起きれんかった と/日に焼けた顔をゆがめて/弱々しく答えた/ふと目に入った水仙を数本手折り/そこのお地蔵さんに祀っとくれ/と私の手に押し込んだ」という四連が目に入った。そうか、そうだったか、よかった。などと思いつつ「水仙を数本手折り/そこのお地蔵さんに祀っとくれ/と私の手に押し込んだ」というところで、「ああ、水仙をお地蔵さんに」昔の人らしいなと思った。昔は、辻堂によく飾られていたものです。こうしたなつかしい習慣にであった。「水仙」は、庭にも土手にも咲いている。腹が痛くて起きれなかったが、幾日かぶりで起きれた。その感謝をお地蔵さんに水仙をあげたいのだ。そういう素朴な気持ちが、「うるわしさ」ではないだろうか。「気持ち」を書きたいし、届ける事が、詩の初めの始りだろうと思う。


8.『璞』第4号

璞は、(あらたま)と読む。町田市在住の宮崎亨さんが発行する六名の同人誌。後書きまで40P。宮崎さんの巻頭エッセイ「試されている美―璞・時代詩の美の意味」がとても良い。石川五右衛門の釜茹での話に始って、林房雄の「愛と美を求めるひとは詩人となるだろう」を引き、宇佐美斉訳のランボーの「美」におちつく。これを読めばあとはいいやとさえ思わせるほどの名文。「事実は小説より奇なりのごとく、小説の上をいくBの極限が新聞を覆うのは、フランス革命以後の歴史において、個々の人間にもたらされた自由が自己抑制されないからだ。」とはいえ、同人の作品は、それぞれ言葉に深さと品位がある。文学をしっかりやってきたことを窺わせる人々の雑誌。


9.総合詩誌『PO』156号

 竹林館から発行されている雑誌で始めて読む。特集は「新川和江」。
新川和江さんの詩や言葉に出会ったのは、新川さんが『現代詩手帖』の選者をされていたときだった。その後、長野で『地球』のセミナーがあり、新川さんの朗読とスピーチを聞いた。印象深い言葉だった。うろ覚えであるが「詩に書いた言葉は自分だけのもの思っているでしょうが、そうではないのです。すでに、自分以外の人が使った言葉なのです」と言われたのだった。私にとって、「詩とは何か」よりも「言葉とは何か」のほうがより大きな問題として存在するようになった。私は、詩集よりも「詩論集」を多く読み、自分もまた「詩論を書く」のは、この時の新川和江さんの言葉との出会いがあったからだ。
 雑誌の特集は、新川和江1つで一冊の本ができるほど多くの詩人が文章を寄せている。新川和江を慕いつつ、こころふかく暖かく読ませていただいた。










10.『鹿』138号

 静岡で発行されている『鹿』は、読み始めて十四年目となる。編集人の埋田昇二さんが送ってくださっている。会員の方々も高齢になっていると思う。詩は、詩を書く者のそのときどきの時間と社会が混ざり合って、進んでいく。人類の歴史や世界の歴史、日本の歴史、その片隅で詩人は、埋田昇二「まあ いいじゃないですか」38P.と生き抜いてゆくのだろう。後書きに同人の一人が「靴を探す夢」を書いている。何回も見るという。それを山頭火の「まことなる句」へ結び付けている。夢の現象は面白いと思う。





11.『ACT』vol,391

 2014年より送付いただいている。「仙台演劇研究会通信」というもので、10Pしかないのですが、現在の日本の社会と政治への批評性に富んでいて、なかなかきょうみ深いのです。巻頭言があり、新刊本レビュー、美術・音楽・映画・社会時評・最後は丹野文夫氏の詩「朝」。A4.の両面印刷で中折しただけで、ホチキス止めなし。簡易ですが、主張したいことを的確に伝えている。「現代を発信している」と思う。








2015年2月7日土曜日

3月。小島きみ子と勅使河原冬美のコラボ。


★作品には、それぞれの作者の著作権が存在します。無断転載を禁じます。
3月の小島きみ子と勅使河原冬美の『花と現代詩』コラボレーションは、「来るべき微熱」と「写真詩・連詩」です。小島きみ子「毛糸のフェルトの家は誰の? 」×勅使河原冬美「だから、もう着く」 
*リマスタリング作品:「2つのハートはチアノーゼ」詩篇つき。
*連作:「薔薇の埋葬」「ライムライト」
   
                         

            寄せ植え。シクラメン。ジュリアンポリアンサ。ハナカンザシ。
            ゼラニューム。

                 ハナカンザシ・アルストロメリア・ジュリアン。

 
ジャスミンのポプリ          



薔薇のポプリ


                                         サシェ。ポマンダー。
                                         香りのプレゼントset。

 







★3月の新作コラボレーションは、
「来るべき微熱」と「写真詩・連詩」です。


勅使河原冬美作品 「来るべき微熱」 

来るべき微熱。
期待なんてしてない。
ご存じだろう?
ただただ酸化するのを。
途端に満開となる梅、桜、向日葵、
深夜の逆襲の痕に不気味なのか
叙情的なのかわからぬ未来の看板が。

『黄スイセンと黄色の熱球』




★写真詩;小島きみ子+勅使河原冬美
  

「毛糸のフェルトの家は誰の? 」 小島きみ子

  卵は孵りましたか?
  鳥よ
  頭上で囀る鳥よ
  巣立ったのはあなただったのですか?
  鳴き声だけが
  日差しを染めて私の指にからまる
  緑とオレンジ
  あなたの羽の色のように
  光はわたしの皮膚を通り抜けて何処へ行くのか。
  何処へ?


「だから、もう着く」 勅使河原冬美 




ら、



く。

そう聞く。聞いたのだよ。
電波と画面を介して視覚と聴覚へと輸送される。
ネオン街のサルヴァドール・ダリ伯爵、
よき夜にその髭をあろうことか引っ張った鴉、
或いはケツァールを許せ。
序盤のシーンでなにも聞こえず、
最後のシーンでもなにも聞こえないで、
なんと刹那的な温さか。




それでは、ヒマラヤスギの実:Cedar Roseの美しさを紹介したいと思います。
1月に森林に拾いに行き、湿っているので二週間乾燥させて、形状を保持させています。
外側からバラバラと花びらが零れて壊れていきます。木片のような感じの花びらです。
壊れてしまうものが多いので、『森の香り』を届けようと箱入り、額装にフラワーアレンジしました。
Cedar Roseの美しさに魅せられます
             

               薔薇のブローチのように美しいです。


                     
勅使河原冬美 詩
「薔薇の埋葬」

箱という字は形態を少しずつ変え複数存在する。
変化の儀式。
薔薇の戯曲が蘇ったようだ。
つまり散らばったモンタージュ。
それは埋葬の冒頭、教会へ向かうフラメンコ音楽を流す馬車。
過去の無闇な習慣と魔術の遍歴。あの時に開けられる!


                Cedar Roseとセンダンの実、薔薇リーフ。
             連作『薔薇の埋葬  』 額装


                           
            連作コラボ
            『薔薇の埋葬 』左。右は『幸福の小さな花束』               

               連作コラボ『薔薇の埋葬』               



薔薇の埋葬 勅使河原冬美

箱という字は形態を少しずつ変え複数存在する。
変化の儀式。
薔薇の戯曲が蘇ったようだ。
つまり散らばったモンタージュ。
それは埋葬の冒頭、教会へ向かうフラメンコ音楽を流す馬車。
過去の無闇な習慣と魔術の遍歴。あの時に開けられる!

連作『薔薇の埋葬』



           『金色の薔薇 1』上方から

           スタンドで机上に。
            『金色の薔薇 1』 正面          

                         
            『金色の薔薇 』
            壁掛けタイプ
           



               31個のCedar Rose
               かわいい薔薇のクッキーのようです。
               箱入りです。
               ★作品『薔薇のクッキー』




Cedar Roseとドイツトウヒ、赤松のマツボックリのアレンジ
 『茶色の箱の中の森の物語』

    
              『三種類のマツボックリの籠』赤松・クロマツ・ドイツトウヒ



                        角度を変えて、壁掛けに。
           『三種類のマツボックリの籠』赤松・クロマツ・ドイツトウヒ


             『森の輝き』
            ドイツトウヒと赤松のマツボックリのアレンジ。
            黒い竹籠。壁に掛ける事もできます。


               木の実の形状が安定していて花が大きいです。
              『黒い箱の中の金色のCedar Rose』

              

               『森の物語』
               赤松マツボックリ。センダンの種子。ドイツトウヒ。
               Cedar Rose。ドイツトウヒの暗い茶色から明るい赤松の実まで。
               
                             
                                「森の物語」
                全体。箱入り。              


             『2つの薔薇の心臓の中にあるもの』
               ライムライト。Cedar Rose。



   幸福の小さな花束   勅使河原冬美           

マグリットはご存じだろう水色の結納。
白い爪は幸せな痕を。
頁をめくれば知らぬ間に真っ昼間。
風に含まれた豊富な栄養素はご存じだろう?  

               連作 『幸福の小さな花束 』
               ハート枠の中にミモザ・Cedar Rose・
               センニチコウの花束があります。白い額装。

          

           『幸福の小さな花束』壁掛け用。

               『幸福の小さな花束 3』
               ハートの形が2つの枠の中に、Cedar Rose・ミモザ
               が横向きに並びます。白い額装。テーブル用。




               赤松のマツボックリとCedar Roseのアレンジメント。
               『森の輝き』テーブル用。


2つのハートはチアノーゼ。
2014年のリマスタリング作品。
*勅使河原冬美 詩


ありきたりな愛ではなく波打ち際の制服か騙し合いだろうか?
消えたら逃げて。
スープを飲み干すまでの六十分はチアノーゼを患う。



定刻には来ぬ月に。
たまには寂しさが。
露呈した輝きが腐るか瑞々しくなるかはその睫と目玉と口だけ。
独りぼっちの兆し。
必ず玩具のピストルで。
二階の踊り場で。
君を撃とう。

               その1とその2.木製額装。


                  その1.
           

                    その2.                        


勅使河原冬美 詩「ライムライト」

ライムライトに囲まれ瞑想する男は来るべき冬と対峙する。
空の旅はタブラの音で。
夏はしばしば危険を犯すなんて常套手段。
魔術を緑にまた彩飾し駆動させる。
懐かしい画素。
日差しが照る舗道へ。
てくてく歩きで行くのだから。


            
           連作 『ライムライト』
            Cedar Roseとライムライト。
            杉の箱入り。テーブル用。

                                  

               


              
               テーブルに置いても美しく気品があります。
               Cedar Roseの形と色彩がライムライトにマッチして
               森の物語を伝えてくれます。


2015年1月の詩集と詩誌

2015年1月の新詩集と詩誌
1月末日までにお届けいただいた、詩集と詩誌等の紹介をします。


★1月の詩集





1.細田傳造詩集『水たまり』(書肆山田)。
 表紙の文字は金色ですが、撮影すると白く光っています。金色は、白い光であったかと納得します。タイトルの「水たまり」は巻頭から5番目にあります。今までの最年長で中也賞を受賞している、細田さんのプロフィールを知らなかったのですが、少年の日の記憶の水たまりを「詩」にしたことに「はっ」と胸を打たれます。その水たまりは、泥水ではなくて、詩の奥行きは深く「雨上がりの/どろみちを帰る」後ろで、金色に光り輝いているのです。「みずたまり」の全行を引用します。「雨上がりの/どろみちを帰る/かつとしが兵隊の話をしている/校門を出て/ずぅーと兵隊の話をしている/かつとしがお父さんの話をしている/おまえの父ちゃんは戦争に行ったのか/かつとしがきく/首をふる/ばかもーんさんごくじん/たたんだ唐傘でかつとしが突いてくる/おれは頭突き/そのまま組みついて/ぬかるみにたおれ/大きなみずたまりで戦った/どろんこになって首をしめあう/ちょうせんじんのこどもがふたりけんかをしている/まわりでおとなたちの声がした/かつとしの力がぬける/おれの力がぬける/かつとしがすすりなく/あしたの二部授業は遅番で/またかつとしといっしょだ//

2.冨上芳秀詩集『かなしみのかごめかごめ』(詩遊叢書)
 後書きまで、103Pのペーパックスの詩集です。1P.に一篇ずつの散文詩。上田寛子さんの表紙画と9枚の挿画が、富上さんの詩の言葉のうえに、また違うイメージをふくらませていくように感じます。挿画には、詩とは別のタイトルがついているからです。扉に「茉莉に」と書かれています。たしかお嬢さんを亡くされたように記憶します。最後に置かれた作品「薔薇」より
「その人は花に埋もれて眠っていました。まだ、二十八歳なのに、もう永遠に齢をとらないで、若く美しいままの姿で、横たわっているのです。」





★詩誌・文化通信・俳句誌等


















1.ロシア文化通信『GUN群 』

 たなかあきみつさんが送ってくださった、ロシア文化通信『GUN群 』第45号を読んだ。エッセイ;サハリンで生きる民族のために ニヴフの作家サンギの思い;田原佑子ほか。たなかあきみつさんの翻訳詩は、ヨシフ・ブロツキイの「スペインのダンサー」は4行19連。「ダンスとは傷口からの出血だ」

2.自由律俳句誌『蘭鋳』創刊号

 表紙画と装丁はtwitterフォロワーの琳譜さん。特集「長律」での矢野錆助氏の文章を興味深く読んだ。私は碧梧桐のファンである。畠働猫の「秋」より「何を食べても君はいない」存在していたものを失う寂しさ、儚さ。1行の前衛詩であると思う。#蘭鋳

3.『潮流詩派』創刊60周年 240号(1955年結成)

 編集発行人の村田正夫氏がご健在の頃、私が長野県佐久市岩村田で詩を書いていることを何かでお知りになって、雑誌を送っていただいたことがある。交流が途絶えていましたが、昨年より奥様が送ってくださいます。同人には存じ上げている方が何人かおられます。鈴木茂夫さんが書評時評。雑誌評は勝嶋啓太さん。特集は「魔」。2段組で、それぞれの主題に沿ってじっくり書き込んでいるというのが、この雑誌の書き手の印象です。
雑誌の表紙写真、見返しの写真は「福島の汚染土の黒い袋」です。以前からtwitterなどでこの「黒い袋」を見てきました。1袋の容量1トンということです。積み重なって借り置き場に置かれて、袋が破けていくと、汚染は除去されないのは誰の目にも明らか。絶望の黒い袋。近くに民家がある。放射能は高いはずと思うのですが。

4.『榛名団』13号冬号

群馬県の富沢智さんが編集発行する。連載エッセイは木村和夫さんの「萩原朔太郎の作品と共に」連載6.敷島公園のことが書かれている。現在は薔薇園と聞いている。行ってみたい。川端進さんの「あの時の朝のような」を読む。昨年、『バッコスの唄』という個性的な詩集を発行されている。

5.『どうるかまら』2015年1月 17号

 発行人は、倉敷市の瀬崎祐さん。西日本の力のある詩人たちが結集している。タケイリエの若手から岡隆夫、秋山基夫や境節までバランスのとれた執筆人で、それぞれが読ませる。今回、秋山基夫は書いてはいないが。岡の「きゅうりのしる!」詩形を見るだけで楽しい。タケイリエの「遠い国」よい。誰とは挙げることなく、それぞれが、連の構成、1Pの紙の使い方も個性がある。用いている言葉の深さと多種類の意味のおもしろさ。このおもしろさが「現代詩」だと思う。詩のおもしろさをもっと伝えることだ。現代詩は難解などという、聞き飽きたし、言い尽くされた言葉を、詩の面白さで組み伏せてしまえばいいのだ。

6.『アダムサイト 27』

 三条市在住の横山徹也さんの個人誌。物理の元高校教師であったと記憶する。詩の言葉に無駄が無い。中上哲夫が寄稿している。群馬の詩人「富沢智」へのオマージュだが、これらの関係が私にはさっぱり理解できていないので、なんとも言えない。横山徹也の作品が5篇。中綴じの自家製本で、シンプルであるがなかなかの出来栄えの16P.

7.『街景』第三号

 台東区在住の長谷川忍さんの個人誌。表紙の裏側に長谷川さんの描いた風景画。中綴じでカラー写真は長谷川さん。カットは丸山あつしさん。編集後記まで13Pですが、妥協のない、しっかりとまとまった雑誌。
詩作品2篇と、連載エッセイ③は、永井荷風の随筆のことを書いている。「永井荷風の歩いた街」で、「深川の散歩」、「寺じまの記」、「方水路」のことが、ゆったりとした語り口で書かれている。永井荷風の『断腸停日乗』は、永井荷風の日記で、1917年9月16日から、死の前日の1959年4月29日までの、日本の激動期の世相とそれらに対する批判が書かれているものです。読み物として、近代史の資料としても興味深いものです。
作品「かわき」より。「はじめに/水があった。/睦み合う時も/交わり合う時も/対峙し合う時も/赦し合う時も/憎しみ合う時も/傍らには/流れがあった。//」編集後記に「今号は、水を背景にした詩を選んでみた」ということで、荷風の随筆を辿ったエッセイも水の周辺となっている。

8.『駆動』第74号

 飯島幸子さんが発行人。同人は多くが都内在住の方々で、存じ上げているお名前は2人。表紙絵を描いていた画家が逝去したと後書きにある。年齢の高い同人の雑誌。30Pに金井光子さんの「生きる」という作品がある。「百三歳の誕生日を迎えられた/新老人会の会長/(省略)会長の笑みのポスターを近くにおいて/いつも眺めていると/あと十年は生きられるだろう…と/生きる勇気が湧いてきた」

9.『風都市』第28号

 倉敷在住の瀬崎祐さんの個人誌。瀬崎さんの作品が2篇。ゲストは森山恵さん。森山さんの「道、歩く人―エル・カミーノ」がとても素敵だ。昨年、彼女は父親と聖地を巡礼した。そして無事に帰国した。「祈っていてください」という手紙、「あなたのことも祈ります」という手紙。そんな心優しい彼女だった。作品は、ツェランから引いた詩句が、示されているが、その詩句に重ねられた、聖地巡礼のひとあしひとあしが、悲しくて美しい。(茨は(傷口を求め この詩句が痛くしみてくるのだった。そして、やわらかな黄色のエニシダが(エニシダのかがよい、黄色く、崖は(空にむけて膿を流す、

10.季刊『びーぐる』第26号

 特集は「詩とエロス」。アンケートには、編集の山田氏まで27人の詩人が解答してそれぞれに頷かされる。小島きみ子の文章は30P.にあります。新作詩がすばらしく良いので、タイトルを挙げておきます。林美佐子「ユリの花」、野村喜和夫「ヒメのヒーメン」、四元康祐「M」、高階杞一「先生の花」、小池昌代「伝説」。詩人の個性とは、かようにも豊かなものかと感心するくらいにそれぞれの言葉や、詩の誕生する場所の土壌が豊かで深いのだ。


11.詩誌『侃侃』23号

 詩作品、エッセイ、田島安江さんの書評による、101Pの雑誌。定型封筒に入る大きさ。巻頭の山村英治さんの「からんころん」は最初が行わけ、3~11行の散文。と使い分けながら、詩情がある。船田崇さんの「ぼんぼん峠」はリズミカルで多少饒舌です。赤鬼や青鬼はすでに使い古されてはいるが、飽きずに最後まで読ませまるのは、力でしょう。食べたり食べられたりした詩の鬼の技。

 12. 『hotel第2章』 no.35

 詩作品13篇。実力の大人の詩人たちの作品を堪能できる。海埜今日子さん、森山恵さんが、ここでも新詩集発行後の詩篇を発表していて「書けるという力」を示している。詩集評は根元明、川江一二三さんが「海埜今日子詩集」「伊藤浩子詩集」について書いています。「すぴんくす」の書評とあわせて読むと興味深いかと。私もこの詩集の書評は、「詩と思想」12月号で書いています。

13. 『すぴんくす』vol.22

 佐伯多美子・海埜今日子さんによる2人誌。ゲストの木村裕氏が、作品と海埜今日子詩集評を寄せている。海埜今日子詩集『かわほりさん』の違う角度の評を読んだ。「意味の焦点を結ばない」フォークロア。よい感じ方だと思った。海埜今日子の詩から感じる「感覚」は、自然を通って人間の内側で、人工の物にしているからだ。

14. 『詩遊』No.45

 昨年、後半からお送りいただいている雑誌。私は、この雑誌の表紙画のファンです。ここに書いている人々は、大阪文学学校で学んだ人々と聞いています。2段組の紙面構成ですが、下の段は上の段の三分の一ですが、下の段に良い作品もあります。『詩遊』の誌名が示すように、あまり肩の凝るようなものはありません。心の中に沸き起こった「しごころ」を自由闊達に解き放っているなあ、と思う。それでいいと思います。下の段に書かれた林美佐子さんの『この村』は、いい詩だなと思いました。「全てが書き割だったと知りました」私も同じ思いをしたことがある。

15. ドルフィン創刊号

 広瀬弓さんとカニエ・ナハさんの2人誌、創刊おめでとう。お2人は「現代詩手帖」投稿の同級生ということです。投稿とは、こういうことが大切かな。入選○○回です、ということよりも、そこでであった選者や詩友と、あらたな展開をしていくこと。そうした「行為」が大切と思います。作品は、カニエさんが3、広瀬さんが2.カニエさんの「h.k.i」を興味深く読んだ。最終連「せかいよ/今日私は/どれだけあなたの苦しみを苦しめたか」h.k.iとは破壊だろうか。現在の世界の苦しみは、破壊的で絶望的だ。広瀬さんの作品は、タイトルだけでいろいろな想像世界へ連れていかれる。「土墳の丘」 「なす、月、詩人」。「土墳の丘」は、「賽の神」を訊ね歩く。土まんじゅうを畑の人に指さされるのだが、古地図は見えなくなって「賽の神」は行方不明というもの。土の底を探すのはなぜかわからないが、「埋められたものの名前」が道路工事によって見えなくなるとき、見たくなる名前かもしれない。

2015年2月1日日曜日

2月の小島きみ子と勅使河原冬美の『花と詩』コラボレーション

★作品はそれぞれの作者に著作権がありますので、留意ください。無断転載は禁じます。

小島きみ子のフラワーアートの制作に伴って、勅使河原冬美さんが現代詩を創作します。お楽しみくださいませ。twitterとFacebookで告知していきますので、お立寄りください。作品はすべて「花と詩」を一対で制作していきます。今回は、詩文はフォトフレーム額になります。



2月のカーネーション
やさしい花のスピリットをお受け取りください。
朝の光を浴びる清清しい春の香りのカーネーションスプレーです。


「花の精霊の光と影」



「ブルーの意識の中の春の予感」


   



                                          「春の予感(Spray)」

                                           


 森の贈り物。
 美しいヒマラヤスギのCedar Roseです。



★勅使河原冬美さんの詩は、「花」の作品に沿わせて2通りの連作バージョンです。
いずれも、作者に著作権があります。『花と詩』は1対になっています。
詩のフレーズとCedar Roseがリズミカルに飛び交います。
勅使河原冬美さんの詩文は、フォトフレーム額になります。
ご注文によって制作します。

★作品はそれぞれの作者に著作権がありますので、留意ください。無断転載は禁じます。
2月の詩作品1.勅使河原冬美

作品 1-1

トタン屋根を滑り出した途端に村の草むらへ。
白い波止場が見えた。微風の匂いは今、朝を演じている。
あのパン屋の窓から見える絵本の挿し絵みたく…





★白い箱の中で、Cedar Roseは、薔薇のクッキーみたいに並んでいます。
 マツボックリは白いフォトフレームに入れてそれをさらに、白い箱に入れてあります。



                1.「白い和紙と白い箱の中のCedar Roseの微笑み」

               2.「白い箱のなかの金色の薔薇は春の森を夢見ている」






1-2 勅使河原冬美

(トタン屋根を滑り出した(途端に(村の草むらへ。
(白い波止場が見えた。
(微風の匂いは(今、
(朝を演じている。
(あのパン屋の窓から見える
(絵本の挿し絵みたく…

                3.「黒い箱のなかの春の気配」                
              


作品1-3 勅使河原冬美

トタン屋根を滑り出した途端に
村の草むらへ。
白い波止場が見えた。
微風の匂いは
今、
朝を演じている。
あのパン屋の窓から
見える絵本
の挿し絵みたく…



               
               4.「トタン屋根を滑り出したマツボックリの笑い声が輝く」
                                詩篇もフォトフレームの額装になります。3個で1対となります。


           並べるとこんな感じになります。














勅使河原冬美の詩
2月の作品2.

2.幸福の小さな花束


マグリットはご存じだろう水色の結納。
白い爪は幸せな痕を。
頁をめくれば知らぬ間に真っ昼間。
風に含まれた豊富な栄養素はご存じだろう?






                   5.「幸福の小さな花束」              

「幸福の小さな花束」
真ん中の額に詩篇で巻いたセンニチコウの花が入っています。



           詩篇はこのように詩片になっています。

連作「幸福の小さな花束」









               注釈:「シロツメクサの首飾りと四葉のクローバー」
                   *精霊のアイテムその1.
             

このクローバーの丘で採取したシロツメクサで制作したものです。



★2015年2月1日(日曜日)のきょうは、悲痛なニュースが流れました。黙祷したいと思います。
Blue:

「小さなブルーの喜び」がやってくるといい。
懐かしむという心。
未来を夢見るという心。
なんでもない、ひそやかなものに心をとめる。
そんな心を思い出すといい。
人の悲しみや、苦しみにより添うこと。
そんな小さな、
「ブルーの喜び」がやってくるといい。


                 「千のBlue」ムスカリ。日本スミレ。パンジー。

50本の日本スミレ。