豊穣の夏を過ぎて、
森の木の実が、
夜の強雨で落下してくる、
夜明け。
霧と小雨。霧と霧。
湖水の漣。
水と水。
輪郭を失う。
水の流れ。
落下の音。
ざわめくもの。
飛び立つもの。
絵本の森の精霊よ、
来たれ。
葉を伝う雫、雫、雫。
熟す、木の実。
赤く色づくのは、
自身の子孫のため?
小鳥のため?
おいで、もっと近くへ。
そして(あまたの夏ののち)
感受性の内蔵の層は完成される。
感受性の内蔵の層は完成される。
おいで、もっと近くへ。
そんな烈しい棘を持ちながらも赤く熟すもの、
イバラの実。
小路を開けて、だれを誘う?
足元で囁くおまえ、
永遠の愛の花言葉を。
変らぬ心を。
だれの言葉を確かめに?
失意と絶望の果てを見るために?
花咲く小路を抜ければ、
天国と地獄、
轟音の果ての、
永遠。
生きつつ、
死につつ、
詩の言葉は、
白い花の枯れるように、
木の肌が青く燃えるように、
蘇生するのだ。