小島きみ子詩集『楽園のふたり』|下川敬明
「愛」をめぐる思弁と情感が波立ち、溶け合う。
大空の広やかさ――希望、理想、博愛――と
「わたしのなかのあなた」への秘めやかな囁き。
わたしとあなたは
一つの文字になって溶ける
(「カロライナジャスミンの繁みで」冒頭部分)
他にも、「(声の影が、)」のかなしく美しい二重唱、
あるいは、
わたしたちは夫でも妻でもなく、ようやく晴れて、ただのなんでもないものだった。タンポポの種子とともに、わたしたちは無為な物として芽吹くのだろうか。
(「私たちは誰も愛さなかった」部分)
樹皮の内側をながれる樹液のように、言葉の皮膚をめくれば、作者の血と汗と涙が噴き出してくる。何と豊かなこと!
深謝いたします。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。