2013年10月11日金曜日

詩・「鳥の領分」   

鳥の領分」から、Lessonです。長篇詩なので、Lessonのみです。
「鳥の領分」         小島きみ子

1 Lesson

 さて、
 一つの方法としてわたしは水底を求めた。水はわたしを引いて道を開けた。Ekstaseだった。何故ならそれは(わたしはわたしじしんからぬけだす)というギリシャ語のekstasisに由来するので。
 淵ではわたしより先に来ていたバロツク的な装いの「方」がいらしたのでフロイト的サイコセラピー的な自己紹介をしなくてはならなかった。(現実の破壊と生の起源とは無への帰還でしたので。)その「方」は(フーン)と言った。閉じていた二枚の頭の翼を広げながらここでの過ごし方として、琴の音が聞こえても上昇してはいけないと念をおされた。それは精霊に恋をすると再びの死を遣りなおさなくてはならないのだという。もはや。外部ではなく世界の内部だった。それを忘れたらわたしは...この世からもあの世からも消えて無くなるのだ。

 それゆえに、
 飛ぶこと飛び上がることを練習させられた。魂の身体からの離れ方。つま先で立って歩けるようになってからは人類であったときの感受性が失せた。飛び上がることは空虚になることだった。肉体に日々課せられる筋肉の痛みは苦しみから苦しみを経てわたしに変容を起こさせ我を忘れさせた。そして一気に何かがわたしに襲いかかり言葉無き叫び声をあげてわたしはあの「方」と踊っていた。
 ペルソナの原型的行為として、
 わたしを覗き込む「貌」があった。(知っちゃいないさ)とその「貌」が言った。とりあえずは形而上学的なパ・ドウ・ドウを遣りぬくことが肝心だった。それから。水はさらに底へとわたしを引き込んで行った。

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