(夢のなかで夢見たものに、)
小島きみ子
そして、銀杏の木の下で、
死ぬのには、もってこいの小春日和の日でした。
立冬ですね。
あなたの柔らかな声が、
そのことばが、去りゆく夜のユリの舌であったとは、
やはりあなたは、覚めて、冷めていく冬にふさわしい。
(夢のなかで夢見たものに、)(夢の中で願ったものに、)
私のことばが、追いつかないのです。
木枯らしが吹く前の穏やかな、
土曜日でした。
あなたの、りんりんと響く声を見ていました。
澄んだ空を覆い尽くす金色の漣でした。
愛し続けるというこの烈しいストレスをこえると、
あなたは居るのか居ないのか。
あの雲をこえて、
(ゆふやみは みちたづたづし つきまちて いませわがせこ そのまにもみむ(万葉集712))そんな歌を(夢の中で夢見たのに、)。
(夢の中で願ったのに、)。
(夢の中で夢見たものに、)は。
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