2018年12月28日の嬉しいポストでした。
『詩と思想』ベストセレクションに、詩集『僕らの「罪と/秘密」の金属でできた本』より、巻頭詩が掲載された嬉しい出来事でした。その節は、ありがとうございました。
『詩と思想』ベストセレクションに、詩集『僕らの「罪と/秘密」の金属でできた本』より、巻頭詩が掲載された嬉しい出来事でした。その節は、ありがとうございました。
1 (僕らの、「罪と/秘密」)
*傷痍軍人療養所に入所していた叔父の遺書だった。
最後の孤高をまもるため、僕らの、叔父は、脳に水を溜めたまま絶食をして逝った。列島はもはや盲目の暗闇にすぎない。昼夜の区切りのない破廉恥な社会であり、市民全員が白痴とみなされ、日常的絶望は曲がりくねった時間に呑まれ、言語が滅んだのちの暗黒詩集は、移ろいゆく相のもと、仮装の森の、僕らの、「罪と/秘密」の木の下に展示されている金属でできた本、という遺書が宝石箱の中にあった。
*私の内部に存在するあなたとは誰か。
なぜ存在があって、無があるのではないのか? という問いの前に立たされる。もう一つ別の方向から、なぜ私の知っていることがあるのか? という問いを発してみようと思う。あなたがたを眼差しで殺すことが出来たら、道路は死体でいっぱいになるはずだから。
*僕の言葉は、もはや僕だけのものではありません。
今の僕は死後であり、あらゆる空間に空気のように入り込んでいく純粋な原子番号三八状態です。僕は、すべての人の言葉を持っていて、ロランバルトがテキストの快楽で述べたように、同一の位置に局在する二重の機能を合わせて成立するひとつの違反活動を想像してみてください。しばらく待っていてください。僕はもうじき今夜にもあなたの傍に局在します。
*あなたが指摘した僕のプラトン的微笑みと野獣の舌は。
シラノ・ド・ベルジュラックの『月世界旅行記』の必然性なるものはあるのか、という幼年時代の思い出の映画の横顔でした。あなたと僕の舌と襞は、僕らが愛した金属でできた本の、文字もページもない耳で聞く本でした。純粋と、瞬間的の永遠の熱狂へと、連鎖する夜の百合の舌でした。旧い記憶の束を紐解いて、僕らの、「罪と/秘密」を解き明かし、夜を語りあかし、語りつくせない永遠が、真珠色の沼地へと封印されるのです。
*複数の人称を持つあなたと僕の層、膜。
自ら受胎し生育する、僕の内に潜むあなたを、再びあなたの層へ。あなたと僕の(受精卵)という膜を突き抜けて。必然的な物語として、精神脳髄意識に存在する虚無と絶望の層。何度も繰り返す、私の内部に存在するあなたとは誰かの問いの前に立たされる。僕らが、今もなお死に続けていることへの、永遠の愛という喪の始まりは、僕らの、「罪と/秘密」。