「月の夜のスズラン」
月のひかり。
星のひかり。
の、吐息を聴く。
草の、花の、うえに落ちる、
朝の息の、冷たさ。
儚い人の命の夢のつづき。
遠い吐息を聴く。
あなたの言葉のひかり。
月のひかり。
星のひかり。
夜の、言葉の、熱さ。
⚫ 惜夏に、
八月の、
凌霄花咲く、
束の間の、
幸福に、
眼を、
細めて、
いる間に、
花は咲き、
散り枯れて、
人は、
昨日からの、
一続きであったかの、
ように、
喜びと、
絶望の、
坩堝の中に、
落ちて
もはや、
戻る事はできない、
⚫ 花と緑の暮らし
私は、
小さな庭を
持っています。
花や野菜に、
花蜂がやってきて、
次々と
花は咲き
散って、
種子を
飛ばして、
限りある命を
終えていきます。
野菜もやさしく
やわらかな実を、
提供してくれます。
花壇の世話をしていて
思うのは、
私たちは
困難を知るために
生きているのだ
と思うのです。
困難を乗り越える
鍛錬を獲得したとき、
物の命の
永遠が
やってくるでしょう。
⚫ 幻の姉
ブルーベリーの、
丘に暮らす、
幻の姉は、
天国から、
帰って来たばかり。
(私は坂を
まっすぐ行くので、
あなたは
左に折れて行くのよ)
と言って、
消えた。
(お元気でね)
(お姉さんも)
(お姉さんも)
綿飴のような、
小さな手を
振って、
二度と、
振り返りは
しなかった。
⚫ 白く鮮やかに
ふりそそぐ
夏の光の
昼を過ぎて、
急な
夕立のあとに
母は逝きました。
薔薇が咲く
夢のなかで、
朱色の
瞼の裏を
漂って、
紫の波が
押し寄せて、
薔薇の声がした。
(天国には愛があらう
地獄には力がある)
私は私の影と。
小さな
黒い箱の中で眠った。
⚫ 走り書きのように
樹下でゆれているのは 光
人間の(愛)に試練を与えたから
濡れた
灰色の羽毛が
草に
突き刺さっていた
雛鳥の
嬉しい
巣立ちだった
悪戯な猫
おまえが
狙った雛が落下して
あれから
じっと待っていた
楓の木に
いつかもう一度
小鳥が
巣作りをして
雛が孵る日を
いつだったの?
知らぬまに
たった一枚の
走り書きのように
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