2020年2月9日日曜日

暁のそらから、

2013年・詩誌「エウメニデス」第25号より。
暁のそらから、|小島きみ子




暁のそらから、ほら、紅薔薇が降ってくる。
あれは小鳥。
はげしいユニゾンの囀り。
牛乳配達の少年よりもはやい朝の、
紅薔薇の茂みの、はばたき。
すずやかなかぜのこえみちて。
小鳥の羽に集まる薔薇いろのひかり。
暁の門を飛び越えて。
どこへ。
((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((((
((((((((この世界の暁のことは紅薔薇だけが知っている)))))))))
)))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))))
べつの小鳥だね。
えいえんのひかり、さし招き。
ほら、……また。
あの茂みで、あたらしい命が生まれる、


牛乳を配達してくれる牛乳屋さんの牛乳はもう買っていません。当時は、1リットル入りの瓶乳を契約していたと思います。子どもたちが小さかったころは、軒下や、楓の木に巣をかける、小鳥がいたのに、今は巣をかける野鳥はきません。鳥も、猫も、ちいさな子どもの居る「庭」へやってきて、野生を見せてくれました。巣から落ちて死ぬ雛。ブロック塀を上手に伝わって雛を狙う猫。アマガエルや蝸牛も居たのに今は居ない。時間の流れにすれば、15年くらいのことなのに。子どもたちは、巣立っていきました。薔薇いろの雲の向こうで手を降るのは、若い母。膝の上に居るのは、生後6ヶ月くらいの私。

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