2014年2月4日火曜日

詩とドライフラワーのコラボレーション





*プリムラとカイザイク、ドライフラワーのコラボレーション。
額装のドライフラワーはセンニチコウ、薔薇、野茨の実、ノリウツギライムライトです。
池田康さんの作品。(名古屋市在住・雑誌「洪水」編集発行人))





蜜蜂 信濃路          池田康



きみは蜜蜂
花のありかを知る
飛んでいけ そこへ
いのちを吸う一日は金
世界の意味はきみとともにある
蜜を抱き
秘密を抱き
高原の昼を貫き
春渺茫をうがつ一点
を一身として












*大阪市在住の京谷裕彰さんの作品とのコラボレーション。
ヒバの枝は、乾燥するととてもいい香りがします。
いわゆる森の香り、ヒノキチオールが香ります。
ヒバの枝とチガヤの穂のツリーです。

冬の雪の中から伐採してきたヒバの枝と10月の田圃の土手から刈り取った茅の穂。
茅の穂は猫のシッポのような感触でです。
月夜の畦道でこれを見たら、幻想と恐怖が入り混じると思います。

「しずる夏の夜の 死にし神の面影」、
「欠けそめる咳の航跡に引き拓かれる 芋畑の憧れ」
の詩句へイメージが飛んでゆくといいのですが、、、。






反り返りある凹面鏡   京谷裕彰



泥の河に架かる屋根付き橋を渡りゆく黒い人の群れ
冬の朝鮮海峡を渡りゆく蝶番の大群
土筆の群落の地下浅くをうねる土龍の律動
にも似た窮屈さで まなじりを腐す
しずる夏の夜の 死にし神の面影にさきはわれ
欠けそめる咳の航跡に引き拓かれる 芋畑の憧れ
(二十三夜月の南中)













ヒバの枝です。
この分量のすべてが使用されています。











薔薇静か     広瀬大志


眼差しの先の鳥
時間を結うかんざしの
ようにさえずっている
茜色に空は落ちていき
このまま夜になるという
薔薇はいっさいの色をひき
人の眠りへ
彩りの層を積んでいく



*広瀬大志さんの作品「薔薇静か」
とのコラボレーションは、薔薇の花びらの漣と、薔薇のリーフの漣。
二つが、詩のフレーズに押し寄せていきます。







2014年2月1日土曜日

しまわれた、愛


 

不思議ね いつもそうなのだけれど薔薇はお気に入りのものの中にいる 写真の背景 スカーフやハンカチ イヤリングやブローチ 初めて自分でオーダーしたワンピースの柄 子どもの入学祝いにも薔薇を植えた その薔薇で作ったポプリがわたしを深く眠らせる 深く深く心の深奥へと






会えたよろこび 幼い日のわたしたち どうして夢でしか会えないのか あなたは空気のように私をつつんでいる 掌だと思うのだけれど 暖かい掌がわたしの心をつつんでいる 薔薇の香りがする わたしが育った家の庭に咲いていたピンクの薔薇 あの花の香りだと思うあの薔薇はどこへしまわれたのだろう どこにもない 白百合も蘭も れんげつつじも






 

どこへしまわれたのだろう あなたも どこへしまわれたのだろう どこにもいない
不思議ね わたしの子どもと あなたは おない年になってしまった その時も今も 同じようにあなたはわたしの心をつつんでいる あなたは 幼いまま 空気のようなあなたでいる どこかへしまわれてしまったあなたの顔を見ようと 掌の 気配のする場所を 尋ねて行く





その記憶の最後に 辿り着く場所には 小川の 忘れな草の 上を水色の ゼフィルスが飛んでいる わたしは 幼い 心のままに そこにいる わたしは そこにいる自分が 誰なのかも 知っている どうして そこにいるのかも知っている とても 暖かくて 幸せで わたしは 満足している しまわれてしまったものが そこにはあるからだ