2014年3月6日木曜日

三月の詩誌


3月の詩誌が届きました。
届いた順に、セレクトさせていただいて追加していきます。


① 『一篇の詩を三人がそれぞれ修正する四通りのケース』
これは、雑誌なのかナンなのかわかりません。詩論への試みのレポートなのかな?
及川俊哉+高塚謙太郎+松本秀文+山田亮太による。差出名のない封筒からすでに、試みが始まっているのかもしれない。FBフレンド高塚さんへのコメントに「詩誌欲しいです」と書いたので送ってくれたのは高塚謙太郎さんだと思います。[プロセス]①既発表の詩を一篇提出する。②他の三人が①の詩を各々の方法意識に則って修正する。③どのような方法や技術の要請によって修正を加えたかについてのコメントを②の添える。

試みられている既発表の詩は、「指輪(及川俊哉作品)」「屏風集(高塚謙太郎作品)」「その他(おぎゃ(松本秀文作品)」「登山(山田亮太作品)」を各々が修正していく、というかリミックスの変種のような感じもするが笑。愉快な試みで、個人が創作した作品も公開されれば、それぞれに受け止められて、実はこれは修正ではなくて、この現実はそれぞれが感じたように存在するという「唯識」の世界ではないのか?と思う。試みた本人たちからも楽しかったというコメントがあるので、「楽しい試み」であったらしい。私自身がこのごろは、名言や既発表の詩篇について、こうした試みを試みてみたいと感じていたので、「先を越されたな」という感じがしています。





② 「璞(あらたま)」3号。(発行人宮崎亨)町田市に暮らす宮崎亨が中心となって活動する「まちだ詩話会」6人の同人の雑誌。平成二十四年五月に創刊して順調な活動。作品十二篇と、エッセイ四篇。宮崎亨は長野県出身の先輩詩人です。巻頭言からは、現代詩というものを志してきた者のひとりとして、非常に真摯な言葉に自分の姿勢を振り返ってみる。この詩誌を受け取ったそれぞれの人々が心の中で自分に問い直してみるといいと思います。「戦後詩とは、かってわが国の軍事化の動きに対して無力であったことへの反省を背負っている詩のことである。」「詩はポエジー(詩情)とコトバの融合にある。」



③ 「ぽとり」季刊第33号。和歌山県岩出市在住の武西良和個人誌。この詩誌は初めて読みます。特集は「入れ替わる」。詩篇とエッセイ。詩篇は深い洞察と思索に充ちていて、楽しい。前職は校長先生をなさっていた様子。学校の掲示板に毎月詩を書いていたようだ。子どもたちに「校長先生は詩人みたい」という感想をもらったことも。~みたい。というコトバは嬉しくもあり、少し悲しくもある。「それ自体」ではないからだ。これを読んで私も、「詩人」を目ざしているもの、と自分自身を戒めないとなと思った。








④ 「まどえふ」第22号。(発行人・水出みどり)札幌市で発行されている五人の同人誌。古根真知子さんの「ふとん」という作品がおもしろかった。「ふとん」は母が子どものために綿を買って、ふとんにするための生地を買い、縫って作りますが、これは大変な作業です。「綿」は高価なもので、家の主婦は「ふとんづくり」は近所の人や娘に手伝わせて作るのです。それを頭の中にいれてこの作品を読まないと、なんのことかわかりません。
でも、ここにある「ふとん」は、母が娘のために買ってくれたふとんのようです。「敷ぶとんの縫い目が少しほつれて/うす黒いふとんわたが見えて/指を入れて/手の平をいれて/ほつれが広がって/まさぐって/掴めるだけ掴んで/引っぱって/ちぎれて/略」
そんな「ふとん」です。母と作者の自分との関係も「ふとん」との関係に似ているように思う。




⑤ 「GARNET vol.72」2014.3(空とぶキリン社)嵯峨恵子さんが送ってくださっている。嵯峨さんには「歴程」セミナーでお会いして同室でお世話になった。同じ時代を経験しているということもあって、書かれていることの社会背景に共感する。

「そっちよりこっち」は骨折をして会社を休んでいるときの家庭での父親との会話。偶然にも私も彼女とほぼ同じ部位の骨折をしたのだ。
メンバー8人の作品と嵯峨さんがシリーズで「一編の詩から」の42回目、小林耿について。神尾和寿氏の「こんなこと、あんなことがあったけな日記」は、2013年4月から9月半ばまでのドイツ北西部に位置する地方都市オルデンブルグでの滞在記が興味深い。










⑥ 「空の魚」1号。創刊号である。表紙画と巻頭詩が花潜幸氏。編集は相沢育男氏。巻頭詩はユキ・ハナムグリとなっている。11人の同人による詩篇。創刊のマニュフェスト、あとがきは無い。「詩と思想」研究会のメンバーによる雑誌であろうと想像する。特集は組まれていないので、自由な詩篇の詩群。花潜幸さん、渡ひろこさん、小野ちとせさんの作品を楽しく読ませていただいた。
これからが楽しみな雑誌です。









⑦ 「4B]7号。A4の裏表印刷のカード誌。三つ折にして定型封筒でくる。スペースに無駄がなくぎっしり書かれていて、これはこれで良いよ思う。4人の同人による作品が一篇ずつ。これを読んでいると、年上の詩人たちの日常感覚が「こんにちは」の挨拶のように沁みて感じられる。現在の「境地」というものが、誰の詩ということなく伝わってくるのは、時代を共有する世代への信頼か。




⑧ 「ウルトラ」15.(編集・及川俊哉)特集は、中原中也。中原中也記念館長の中原豊氏の寄稿のほかに、中也論は四人の詩人が書いている。、及川氏の「ロシアにおけるサーカスと文学の関わり」、高塚氏の「韻律的中也リフ走り書き」の分析は興味深く参考にさせていただきました。一方井氏の「一つのメルヘン」における「無音」は共感。和合氏の論考美しく散文詩のようでした。



⑨ 「虚の筏7号」(洪水企画編集)先日webでお知らせした紙版が発行されました。小島きみ子は「鳥の遊び」で参加しています。手持ち分は交流誌に送付させていただきます。





⑩ 「別冊 詩の発見」13.(山田兼士編集)35人の詩人からの寄稿と山田氏の作品。大阪芸術大学文芸科の学生による新刊詩集レビュー。小島きみ子は(私は居なかったのでした)で参加しました。2月に作品を書いて3月には雑誌になるという手際のよさ。学生たちの卒業式に手渡すと聞いたことがあったと思います。この時期に声をかけていただき創作した作品は、自分でも集中度が高く、今回はほんとうに「あちらがわへ行ったきり」帰って来れないような孤独な日々でありました。いずれ、作品はブログへアップします。購入希望は、発行所澪標のサイトから。

35人の詩人の寄稿作品を読む。それぞれ好みがありますから、好きな作品は、平居謙さんの「恋の覚悟」と北川朱実さんの「声」でした。平居さんの作品は、美しくて、残酷で、思いもかけない猫の恋の行方に何も知らない少年の恋の覚悟が重なって、苦しく切なく哀れな「古風な香りのする/流行歌を歌いながら/街角を曲がっていった」のだった。どんな詩を書きたいかと問われれば、人を魅了する詩を書きたいと思う。3月の寒い午後にそんな詩を読んだ。


 そして、学生たちの作品が凄くいい。長安香奈の作品はたったの6行しかないが、破壊力がある。最終行「ねえ落ち込んだりしようよ」はよい。柳井明子の「ちょっとしたことで死んじゃうまんぼう」は、社会全体への批評の記号のようで愉快だった。岩崎優香は正統派です。自分の詩の進むべき方向が見えていて、構成する力があります。なかなかの実力です。






★3月の雑誌のつづき。
  文章での紹介は、毎月10冊までとします。あとは画像の紹介にて、お礼といたします。
「藍玉」16、「交野が原」76、「ぶーわー」32。皆様のご健筆を祈念申し上げます。









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