2018年2月19日月曜日


私は一本の杉の木の幹を見つめていました
この木を上っていった蝉のことです
蟻にたかられていた蝉を助けて
この木に登らせてあげた人の指のことです
私たちの人生は 苦しみに満ちている
希望や幸福を求めて暮らしているのに
「生まれてくれてありがとう」と母親は思っているのに

なぜ 生きることはこんなに苦しいことばかりなのだろう
生まれてきたことを 
助けられた蝉
木の幹をヨロヨロと登っていった蝉
助けられたのに蝉は 
蝉の短い命を全うして 
死んでいったでしょう
蝉を木に登らせた指
そんな救済の指が 私たちの苦しみのなかには
温かい眼差しのようにあるはずです



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